衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 「諸君!」2001年6月号
2001.06.01

「四騎の会」は何を考えているか - 5

派閥の論理で動いていてはお先真っ暗。政治家は今こそ、将来のビジョンを国民に示せ!

悪しき「政治主導」

塩崎:

僕は自分のホームページに「経済再生10年ビジョン」というものを載せています。これは、まず2002年までに不良債権処理と産業構造改革を進める。ついで2005年までの3年間に、当面の財政均衡を達成し、最後の5年間で歳入・歳出構造の抜本改革を伴う財政再建を達成するというものです。先の「サバイバルプラン」でもいいですが、こうして何らかのビジョンを示すことができれば、たとえ当面の状況は苦しくても、国民はきっとわかってついてきてくれると思います。しかし、この10年間で、それをした政治リーダーは1人もいなかった。

渡辺:

結局、不良債権問題を解決すべき政権が、「不良政権」になっているんですよ。連立やら派閥やらのせいで、与党の政策にまったく整合性がなくなっている。森政権の末期、3月9日に出された与党3党の緊急経済対策なんて、その最たるものです。たとえば産業再生のためには、生産性の低い過剰債務業界を再編しなければならないけれど、同時に提言されている株買い取りをやれば、そういう業界のボロ株を買い取り機構がかき集めて、延命させてしまう。本来、個々の政策が有機的に関連しあって効果を発揮しなければいけないのに、そういう矛盾する政策が、まったく議論されることなく別々につめこまれてパッケージされる。まるで幕の内弁当です。

根本:

さすがに役人は優秀で、1つ1つの施策はもっともらしく見えないこともないけれど、一貫した思想がない。

塩崎:

トータルプランをわれわれがつくったときも、こちらでメニューを考えると、官僚はそれぞれの施策について何省の何局の何課がやると分担して、実際そこだけをタコ壺みたいにやってきた。省庁横断どころか、局横断、課横断で筋の通った政策をつくることさえ、彼らには難しいんですね。

根本:

だから政治家の役割は、そこにあるわけです。特に不良債権処理のような、各省庁にまたがるようなテーマに関しては、政治家が主導権を持って、各省庁と議論してプランを叩いていかないと、よりよい政策は生まれない。

石原:

ただ、政治主導だというのを履き違えている政治家もいて、筋ワルなことでも押し通そうとして、役所を困らせたりする。

渡辺:

今回の緊急経済対策は、本当に筋が悪いですからね。これを作った政治家の方々に本音を聞いて、私は唖然としましたよ。銀行も事業会社も3月末の株価が心配でたまらないから、政治家も何かやっているふりをしなければならないというだけなんです。

石原:

今回の株式取得機構の政策的な目的は、商業銀行が一般事業会社の株を大量に持っていると、株価の変動に銀行が一喜一憂することになるので、それをなんとかしようということです。銀行は自己資本の枠内まで株式のウェートを減らしていくから、余分に持っている株は全部売ることになる。それによって市場に悪影響が出るのを避けるために、政府ができることはないかということで、今回の機構を考えた。

渡辺:

しかし、銀行の持っている持ち合い株式をかき集めてダメ会社を延命させるのであれば、すべての株を国が買い上げて、会社に対する議決権を行使するところまでやらなければ、政策の整合性がとれない。それでは国家社会主義そのものじゃないですか。銀行が持っているのは、ボロ株ばかりじゃない。実はいちばん多く持っているのは自動車株なんです。トヨタのような超優良企業の経営に国が口を出すなんてことが考えられますか。

塩崎:

最初に株買い上げの案を出した相沢英之元金融再生委員長は、議決権を行使すると言っています。ワシントンには、「日本が共産主義宣言をした」と受け止められている。

これほど重要な問題は、本来ポスト森を狙う人たちが争点にすべきものなんですよ。ところが、どういう政治体制でこれを実行するかなんて議論はやらずに、総裁選挙の前に決めてしまった。しかも森さんが辞めると発言した日にですよ。そんな馬鹿なことがありますか。

石原:

この緊急経済対策は、株価対策から始まって、最後には政局のおもちゃにされたわけですよね。経済対策を口実に、亀井さんをはじめ執行部の延命を図ろうとしたと疑われても仕方がない。

そもそも、政府が株を買って株価を上げようという発想自体が筋ワルです。4月5日付けの英フィナンシャル・タイムズ紙が、「これも仕方がない」と言っていますが、それは、日本経済が異常事態だから、こういう異常な政策も認められる、という皮肉の込められたロジックでした。

渡辺:

産業再生、つまりダメ企業の再編、淘汰を進めていけば、当然銀行の資本増強が必要になる。その正しい方法は、普通株を注入するか、優先株を議決権つきの普通株に転換して、銀行経営者の責任を追及するということです。いわば、口から食べ物で栄養を補給することにあたる。しかし、銀行の持っている持ち合い株式を公的資金で買い取って、損失が出たらそれを税金で穴埋めするというのは、口ではなくてお尻から入れるという話なんです。これでは、栄養とならずに、全部出てしまいます。

石原:

汚いなあ(笑)。

渡辺:

毒々しいのは父親譲りです(笑)。

根本:

われわれは品の良さが売りなんだから(笑)。