衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 東京新聞
2007.01.05

羽田24時間化 官邸が主導

検討チーム、月内発足 5月までに具体策

羽田空港の完全二十四時間利用に向けて、首相官邸内に検討チームが近く発足することが四日、分かった。安倍晋三首相の特命で根本匠首相補佐官が検討している、日本を世界に開かれたアジアの玄関口とする「アジア・ゲートウェイ構想」の一環。検討チームは、深夜・早朝時間帯の利便性を高めるための課題を洗い出し、五月までに完全二十四時間化の実施時期や数値目標を盛り込んだ具体策をまとめる。 

検討チームは根本補佐官のほか、利用者の立場に近い有識者らで構成し、月内にも発足する。

羽田を含む国内各地の空港や港湾の二十四時間利用をテーマとするが、実際には十分な需要が見込まれる羽田空港について集中的に検討することになる。

当面は国内の旅客・貨物便の二十四時間利用が検討対象で、国際旅客・貨物便の二十四時間利用も中期的課題とする。

羽田空港は、滑走路が沖合に移転した一九九七年から、二十四時間の運用が可能になっている。しかし、深夜・早朝時間帯はバス・電車など利用できる公共交通機関がないことなどから需要が低迷しており、現在は、チャーター便を中心とした利用にとどまっている。

ただ、好調なアジア経済の追い風を受け、首都圏では国内線、国際線双方の航空需要が今後高まるとみられ、完全二十四時間化を推進する必要があると判断した。

羽田を含めた空港や港湾の二十四時間利用については、首相が昨年十一月下旬の経済財政諮問会議などで「難しいが、安倍内閣で解決する」と明言している。完全二十四時間化は、成田空港についても検討するが、周辺の騒音問題があるため、深夜・早朝時間帯の運航は困難との見方が強い。

羽田空港24時間化 「役所飛ばし」 政権浮揚を

首相官邸が羽田空港の完全二十四時間化に力を入れることになった。国土交通省など所管省庁を差し置いて調整に乗り出す最大の理由は、国民生活直結の実感しやすい改革だからだ。地元側や関係業界も含めて、利害が複雑に絡み合う空港問題に立ち向かうのは容易ではないが、「チーム安倍主導」「役所飛ばし」による政策実現で政権浮揚を、との期待がこもる。

◆第一弾

プロジェクトの中心となる根本匠補佐官(経済財政担当)は就任以来、アジアの経済成長を取り込みつつ、日本もアジアの発展に貢献する「アジア・ゲートウェイ構想」の推進を担当。二十四時間化を同構想具体化の第一弾と位置付けた。法改正が必要なく、運用改善の決断次第で迅速に実行に移せる利点を見込んでの上のことだ。

根本補佐官らは昨年末までに、有識者や空港を利用する側の企業関係者ら約百二十人から聞き取り調査。その中で、羽田空港に関しては、日本国内は無論のこと、アジア近隣諸国から東京での早朝の会議に出席したり、東京で深夜まで業務をこなした後にそうした地域に帰ったり、出張したりしたいとの要望が強いことが浮かび上がった。

◆ドル箱

そうした要望にこたえるには、現在、韓国やグアムなどへのチャーター便のみとなっている国際線の定期便化が避けられない課題となる。

羽田と東アジアとの関係では、昨年一年間の韓国からの渡航客が、チャーター便効果もあって前年比約二割増の二百万人余に増加。羽田-上海間のチャーター便新設についても昨年十二月、日中間で検討開始の合意がなされた。定期便が実現すれば、双方、ドル箱路線になる可能性が高い。

羽田空港は、近く四本目の滑走路建設に着工する。工事の影響で深夜・早朝帯の空港利用が制限されるため、国交省は二〇〇九年末以降に新滑走路が供用されるまでの二十四時間稼働には難色を示しているが、官邸側はそれまでの間も、柔軟な運用により二十四時間化は可能と判断。新滑走路の供用で見込まれる輸送能力の向上を国際チャーター便の増便に振り分けることなどを検討する。

◆視界不良

計画の推進には、国交省や入国管理を担当する法務省など関係省庁間の調整をはじめ、地元に対する騒音や漁業補償の問題などが立ちはだかる。羽田の完全な国際化に対しては、成田空港に首都圏の国際空港としての責任と負担を担わせてきた歴史的経緯から、千葉県などが反発している。

また、二十四時間空港としての需要の掘り起こしには、羽田と地方空港の双方で公共交通機関の二十四時間化や、利用者に対する深夜・早朝帯の航空運賃の割引といったサービス拡充が不可欠。関係自治体や民間企業の幅広い協力を得るためには、地道な説明を続けていかなければならない。

しかし、利害関係先が多岐にわたるほど、官邸ならではの指導力の見せ場も多くなる。首相補佐官の役割が見えにくいとの批判もある中で、羽田の二十四時間化は「チーム安倍」の真の力量が試されるテーマとなる。

<メモ>

羽田空港再拡張 国土交通省が予定している4本目の滑走路建設事業で、2009年末の供用開始を目指している。限界に達している羽田空港の発着能力の増強が目的で、現施設の沖に新滑走路(2500メートル)を建設する計画。国交省は昨春の着工を見込み、06年度予算に必要経費を計上した。ただ、地元漁協や成田空港を抱える千葉県の反対により、昨年中の着工を断念。07年度予算案にも経費を盛り込んだが、予定通りの供用開始が危ぶまれている。