衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村

第162回 国会衆議院予算委員会議録

○根本委員 自由民主党の根本匠であります。

ただいま私の同僚の長勢委員から、先輩から、社会保障改革を中心に、極めて本質的な指摘、議論がありました。私は、年金問題を中心に、幾つかの論点に絞ってお話をお伺いしたいと思います。

私も、長勢委員と同様に、昨年の年金改革、本質が議論されずに、十分理解されずに、年金問題をめぐる非常に周辺の議論で大変混乱し、国民の不信を招いた、大変残念であります。その観点から、私は、昨年の二〇〇四年の改革がどういう改革であったか、まずこれをしっかりと議論させていただきたいと思います。

マスコミなどでよく議論されるのは、年金問題については、何もしていない、あるいは明確なビジョンが示されていない、将来、本当にもらえるのか、負担できるのか、こういうことが非常に一般的な話としてなされますが、本当にそうなんだろうかということであります。その意味では、厚生労働大臣から、二〇〇四年改革のポイント、そしてこれを大臣としてどう認識し、評価されているのか、この点についてお伺いをしたいと思います。

○尾辻国務大臣 このたびの年金改正法でございますけれども、何といっても、年金財政が極めて危機的な状況にございまして、この危機的な状況に対してどうするかという観点で改正を行ったということでございます。

そして、その中身でございますが、いつも申し上げております四つの柱を組み合わせて給付と負担の均衡を図るということにいたしました。その四つの柱というのが、一つが、上限を固定した上での保険料率の引き上げ、二つ目が、国庫負担の引き上げ、三つ目が、保険料水準の範囲内で給付水準を自動的に調整し、給付水準の伸びを抑制する仕組みの導入、よくマクロ経済スライドと言っておる部分でございます。それから、積立金の活用、この四つでございます。

これらの改革は、冒頭申し上げましたように、年金制度を持続可能なものにするための不可欠なものであったというふうに考えております。

○根本委員 二〇〇四年度改革のポイントは、私もそういうことだと思います。国庫負担の引き上げ、年金積立金の活用以外に、本質的にとらえれば、実は今回の二〇〇四年改革のポイントは、負担上限を一八・三%に設定する。要は、これから負担がどこまで上がるのかという不安に対して、際限なく上昇するものではありませんよと上限を設定する、これを明確化する、将来世代の負担を明示する、私はこれは非常に大事なことだと思っております。

それからもう一つは、給付の方で工夫をしたのが、大臣からお話がありましたように、マクロ経済スライドを導入する、給付の自動調整の仕組みであります。平均寿命が予想以上に延びても、それは調整していく。あるいは、将来世代全体の負担能力を加味する。一人当たりの実質賃金ではなくて、全体の実質賃金総額がどうなるかということで負担を自動的に調整する。私は、このマクロ経済スライドと負担の上限設定、これが今回の、年金を持続可能なものとするという観点からは非常に重要であると思っております。

さらに、マクロ的なチェックで言えば、今回の年金改革によって、将来の国民負担率、これをGDP比で二ポイント低下させております。年金給付費のGDPに占める比率、二〇〇四年度では一二・五%でありますが、これは二〇二五年度で一二%、横ばいになっております。社会保障給付費も、改革をしなければ、将来、二〇二五年度でGDP比で三一・五%になるところを二九%まで抑制する、二・五%給付費を抑制する。私は、これは将来の国民経済の観点からも、それを踏まえた改革だと思っております。

さらに、今回の改革は、これまでは五年ごとに財政再計算、給付と負担を見直すということを繰り返してまいりましたが、マクロ経済スライドの導入あるいは負担の上限設定ということで、実はここが従来の改革に比べて制度の安定性、持続性を強化したということですから、これは私は、世代間扶養を前提とする制度としては抜本的な改革だと思います。

それからもう一点、これは年金に必ずつきまとう批判でありますが、言われることは、負担は上がる、給付は下がる、こう言われるんですね。給付が下がるというのはどういうことかというと、現役世代代替率で下がるということであります。年金の制度というのは、ある意味では現役世代と引退世代の所得の分配の問題ですから、このバランスをどうとるかというのも大事なわけでありますが、その点での改革も今回いたしました。

給付が下がるという言葉、これが私は非常に誤解を生んでいると思いますが、一人一人の立場に立てば、これからも年金をもらえる方の年金は上がってまいります。しかも、もらい始めた年金、これは物価が下がらない限り下がりません。ですから、私は、下がるということが非常に国民の皆さんに不安感を与えているわけですが、名目は上がるんですから、これはきちんともう少し丁寧に説明しておく必要があると思います。

今回の制度改革で課題は何か、これは私は二つあると思いますが、一つは少子化率の設定であります。現在一・二九でありますが、これを数十年にわたって一・三程度をキープするという前提であります。これをどう見るか。次世代育成支援、総合的な子育て支援、これは私は全力を挙げて取り組む必要があると思いますが、この点は残るんですね。

それからもう一つは、将来の負担を、一三・五八から一八・三%に五ポイント上げていかなければなりません。この負担水準が高いとすれば、実は、年金の給付をさらに調整してトータルとして下げるか、あるいは、保険料と税のバランスですから、税の投入比率を高める、世代内扶養のウエートを高めるという、これしかないんですね。要は、年金というのは給付と負担とのバランスの一点に尽きますから、私はこれは丁寧に説得して議論をする必要があると思います。

それから、大臣に一点お伺いしたいのは、スウェーデンの仕組みもあります、今回の日本の年金改革もあります。どういう制度をとろうと、スウェーデンの年金制度、日本の今回の年金改革、私はしっかりした改革だと思っておりますが、このいずれの制度でも、例えば少子化がさらに進んだらどうなるか、あるいはスウェーデンの制度でも、平均余命が延びれば現役世代の給付は下がっていくんですね。ですから、この負担と給付の問題は、いろいろな前提条件で、いかなる制度をとろうとそのリスクはあるということを私は思いますが、大臣、その点についてはどうお考えでしょうか。

どんな年金制度をとっても、少子化の問題、マクロ経済スライドで平均余命の延びあるいは将来の実質賃金のトータルの伸び、こういうものは調整できますけれども、やはり少子化がどんどん進む、そういう問題については、いかなる制度をとろうと負担と給付のリスクはあるんですね。これは、リスクを十分に踏まえて、そして国民のコンセンサスを年金制度としてどうとるかということが私は大事だと思いますが、いかなる制度をとろうとやはりリスクはあるんですよと私は思いますが、その点の大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○尾辻国務大臣 一言で申し上げますと、お説のとおりだというふうに思います。

要するに、保険でありますから、給付と負担のバランス、これはもうだれにも手品ができないことでありまして、おのずと、どっちかを定めるとどっちかがまたそれに比例してといいますか、応じて定まってくるという関係でございますから、これはお説のとおりだというふうに思っております。

○根本委員 私は、年金の議論だけは、国民の皆さんに耳ざわりのいい、調子のいいことだけ言うわけにいかないと思うんですね。負担は上がる、給付は下がる、それはどういうことか、それをきちんと説得するのが私は政治の責任だと思います。政治家は評論家ではありません。しっかりと責任を持って、前向きに、正面切って国民の皆さんに説得をしていくのが私は政治の責任だと思います。

次の論点に移りたいと思います。

次の論点は、年金の水準の議論がありますが、実は、私は、年金の水準の議論は、介護、医療の社会保障全体の給付水準がどうなるのか、こういう議論を抜きにして年金の水準だけを議論するのは問題があると思います。国民の生活の安心ということを考えたときに、衣食住に加えて、寝たきりになったときにどうなるか、病気になったときの安心を果たして確保していけるか、これが重要で、実はこの問題は社会保障全体の体系の中で考えるべき問題だと思います。

具体的な質問をさせていただきたいと思います。

国民一人一人の視点に立った観点で将来安心かどうかという観点から、現在の年金水準をどう認識し、どの程度の年金なんだ。つまり、一カ月の生計費から比べてどういう水準であるか。それから、寝たきりになったら介護保険で介護サービスを受けられるわけですが、そのときの自己負担、一割負担ですけれども、具体的にはどういう数字になるのか。それから、病気になって入院すると、例えば月額五百万ぐらいかかっても一部の自己負担という制度に、七十歳以上の高齢者がなっておりますが、大変、大臣に細かい数字で恐縮でありますが、大臣でなくても結構ですが、具体的な数字を挙げて、今の日本の厚生年金、介護保険、医療保険の制度の中で、国民一人一人の視点に立った場合には、どういう負担、あるいは所得のベースでの負担、あるいはサービスになるのか、これを御答弁お願いしたいと思います。

○尾辻国務大臣 まず、私から基本的な考え方をお答えいたします。もし必要であれば、細かな数字であれば、局長が来ておりますから、お尋ねをいただきたいと思います。

まず、年金の水準のことでございます。

年金のうちの全国民に共通いたします基礎年金につきましては、衣食住を初め老後生活の基礎的な部分に対応することで、現役時代に構築した生活基盤や老後の備え、稼得収入等と合わせて、一定の水準の自立した生活を可能にする、この考え方で水準を設定いたしております。

それから、もう一つの厚生年金の方でございますが、一般的に、退職によって収入の道がなくなる被用者につきましては、今申し上げた基礎年金に加えて、現役時代の報酬に応じて一定の割合の所得を保障する厚生年金があり、これらを合わせた年金の水準は、いわゆるモデル年金と言っておりますけれども、そのモデル年金で月額二十三・三万円となっております。これが年金でございます。

それから、今、医療のお話もございましたので、簡単に申し上げますと、医療の場合は、今おっしゃったような自己負担のそれぞれの割合と、それから高額な医療に対しては、上限を決めてそこまでの医療費で支払いをしていただくということにしてございます。

以上、基本的な考え方を述べましたけれども、もし数字が必要でありましたら、局長からお答えいたします。

○根本委員 ちょっと局長に数字をお願いします。

○渡辺政府参考人 お答えいたします。

今大臣から基本的なところの御答弁をさせていただきましたけれども、基礎年金をお二人で十三万、六万六千円のお二人でございますので十三万二千円余り、こういうことになっておるわけでございますが、基礎的な生活水準ということを見ますと、食料、光熱・水道費、家具・家事用品、被服費及び履物などで十二万五百十五円という数字が出ております。また、保健医療を含めても十三万三千四百八十六円という統計数字もございますし、ただいま年金受給者の方々が、外来医療の場合には、外来月額八千円、入院月額二万四千六百円、食事の標準負担額一万九千五百円、こういうような形でできておるわけでございます。

また、介護につきましても、例えば年金受給者の場合、モデル世帯等々でありましても所得税の世帯非課税者等に当たりますものですから、一割負担の上限額が月額二万四千六百円になる、こういうような状態で、さまざまに工夫をしていただいている、こういうところでございます。

○根本委員 国民一人一人の皆さんの視点に立てば、老後の安心は所得保障でこれは現金給付、この年金をベースに、現物給付たる医療そして介護のサービスによって、寝たきりになっても、あるいは病気になったときの安心も担保できる、これが基本だと思うんですね。

ただいまお話がありましたが、例えば厚生年金、これは他の所得を前提としない厚生年金ですが、大体六十五歳夫婦二人で二十四万弱、一カ月の生計費は二十四万弱。普通の一カ月の生計費は厚生年金で賄えるような水準というのが現状の水準で、しかも、仮に病気にかかって一カ月医療費が五百万かかったとしても、一般の方だったらトータルで七万ぐらいで済みますし、年金のみの所得の方は例えば食事代入れても四万円、あるいは一番低所得の方は食事代入れても二万四千円、こう抑えられているわけですね。それから介護保険でも、一割負担ですから、例えば三十七万の給付サービスがかかっても三万七千円で、プラス、施設に入れば食事代、食費。

こうなりますから、実は今の日本の社会保障の水準はそういう水準にあるということで、先ほど長勢委員からも出ましたが、やはり社会保障の問題は、年金、医療、介護、このトータルを考えていくことが私は非常に大事だと思います。それは、いろいろなケースがありますが、日本の今の社会保障の給付のベースはこういうベースであるということを認識した上での議論が必要ではないか。

それから、一方ではマクロ的な視点も大事で、社会保障給付費が将来の国民経済全体として負担できるか、これが実は、GDP比の社会保障給付費をどう見るか、水準をどう見るか。これは、二〇二五年で社会保障給付費は百五十二兆円で、対GDP比二九%になっております。今回の年金改革で、実は三一%だったものを二九%に削減いたしましたが、こういう水準で、これはヨーロッパ、アメリカと比較しても、私は、将来、二〇二五年時点でも、これは負担可能な水準だと思います、ただ、これをどう見るかという話はありますが。

それから、社会保障の場合は、よく負担負担、こう言われますが、国民一人一人の皆様が負担していただきますが、実は、年金という形で将来の、老後の所得保障で戻ってまいりますし、寝たきりあるいは病院に入ったときには、介護サービス、医療サービスを受けられるわけですから、これは、一方的な負担ではなくて、負担をしても安心が享受できるという性格のものですから、この辺の社会保障の政策論を考えながら、全体のマクロ的なチェックもしていくということだと思います。

こういう制度を安心して持続的な制度にしていくためには、当然のことでありますが、年金、医療、介護の各制度の効率化をできるだけ図っていかなければなりません。その意味で、今、医療改革、介護保険改革にも取り組んでいるわけでありますし、それぞれの制度に給付に重複がないか、それぞれ税も入っているわけですから、やはり税の投入の効率性、こういうことも、効率的に使われるという点からのチェックも必要だと思います。その意味で、年金、医療、介護、これについては、やはり社会保障改革の一体改革、国民一人一人の視点それから経済全体のマクロの視点、これから一体改革、整合性を図る、整合性をとった改革が必要だと思います。

次に、三点目に移りますが、スウェーデンの年金改革のプロセスに見る教訓というテーマで、大臣にお伺いしたいと思います。

社会保障改革、これは、マクロ経済の動向や税との関係を初め長期的な結果責任を負う国民の代表が、党利党略にとらわれず真摯に国民に理解を求めていかなければならないものだと思います。スウェーデンの改革は、今回の年金改革でも参考にさせていただきました。内容もそうでありますが、マクロ経済スライド、プロセスにおいても、私は、政党政治のあり方として非常に示唆に富んだプロセスだったと思いますが、厚生労働大臣の尾辻大臣におかれては、このスウェーデンの年金改革のプロセスをどのように認識し、評価されておられるのか、御意見をお伺いしたいと思います。

○尾辻国務大臣 金曜日のこの委員会でも御答弁を申し上げたところでありますけれども、私どもがスウェーデン方式に学ぶべきは、制度もありますけれども、その制度をつくり上げていく、まさに今お話しのプロセスの部分は大変学ぶべきまた大きな点だというふうに思っております。そして、金曜日にも申し上げましたけれども、そうした御論議をぜひ進めていただければ、私どもも大変ありがたい。その中で、私どもはいかようにでも、これは本当に、本当にそう申し上げているのですが、謙虚にならせていただきますということを申し上げたところであります。

○根本委員 スウェーデンのこの意思決定のプロセスに実際に参画したケーンベリィ、タレーン、パーマー、私も直接お話をしてまいりました。

スウェーデンの改革のプロセスで私なりにこれは大切だなと思いますのは、実は長い年月をかけて議論をしております。それから仕組みとして、簡単に言えば、超党派で真摯に協議して、政争の具にしない、これが私はポイントだと思います。各政党から代表が出て、その代表間で徹底的に議論をするんですね。そして、労働組合や経営者団体、年金受給者団体などの利害関係者、これはメンバーから外すんですね、そして意見は聞くんです。

それからもう一つは、数理計算の専門家、これを入れていまして、具体的に議論をしたとき、では、こういう案なら給付と負担の水準はどうなるのかと。年金というのは給付と負担の数字の議論ですから、これを専門家を入れてやる。この専門家が徹底的に議論する、これが私は非常に大事なポイントだろうなと思います。

さらに、政権が途中でかわっているんですが、これは大方針の変更なく、一九九一年十一月からスタートした議論が九八年に案として国会で成立する、こういう経緯があります。

私は、大事なのは、スウェーデンではこういうものをコンセンサスポリティックス、合意の政治と言われていますが、やはり徹底的な調査研究活動を通じて、事実は何か、そして論理を積み重ねながら合意形成を目指す。私は、社会保障、とりわけ年金こそこういう議論、あり方が大事だと思います。年金制度のような専門性の高い分野では……(発言する者あり)厚労省やっていないではないかという話もありましたが、見識ある政治家が詳細な検討を行った上で、政策の方向を示して、それを国民に説明して理解を求める方法をとるべきだと私は思います。スウェーデンでも、大筋を決めた後、合意の実現に向けて政府で作業して国会へ提出したんですね。ですから、私は、このコンセンサスポリティックス、このスウェーデンのプロセスにしっかりと学ぶべきだと思います。

それでは、最後に、年金一元化について御質問させていただきます。

年金一元化議論、年金一元化というのはいろいろな議論がされておりますが、尾辻大臣のこの年金一元化についての御意見、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

○尾辻国務大臣 年金一元化については、まさにいろいろな御議論がございます。

まず、社会保障の在り方に関する懇談会においては、昨年十二月八日に取りまとめられた中間的な議論の整理の中で、年金一元化が将来的な選択肢の一つであるという認識が示されておるところであります。このうちの被用者年金の一元化については、たびたび総理も言及をされておるところでありますけれども、年内にも一定の方向性を示すとした与党を初めとする政治的な議論がございます。これが一つ言われております。

そうしたものも私どもとしては注視をしながら、申し上げましたように、総理の答弁などもございますから、私どもなりに全力で取り組んでまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

○根本委員 年金一元化というのは、スローガンとしては本当に美しいんですね。耳ざわりもいいんですよ。ただし、具体的な制度論は必ずしも明確ではない。内容が問題。(発言する者あり)ちょっと静かに聞いていただきたいと思います。

将来の選択肢の一つという話もありました。実は、一元化の目的は何だろうか、私も考えました。一元化の目的は、国民の全員が公平な負担と給付を受ける、これが本質なんですね。ですから、究極の一元化といえば、この目的自体は一つの理想だと思います。しかし、一元化といっても、実は幾つかのパターンがあるんですね。今お話がありました、典型は、サラリーマンと自営業者の制度を一つの制度にする完全統合案というのもありますが、サラリーマンと公務員、要は被用者年金のみの統合案、これも一元化論としてあります。

一部で熱狂的に支持されている完全統合案、私はこれもいろいろな問題があると思うんですね。

一つは、自営業の国民年金とサラリーマンの厚生年金、自営業者には厚生年金のような企業負担がありませんから、一元化しても、この部分をどう負担するのか。ごまかす議論は、一元化したら自営業者も厚生年金と同じ給付を受けられるんですよというかのごとき議論がありますが、実は、仮に自営業者が厚生年金と同じ額の給付を受けようとすれば、企業負担はありませんから、保険料は四倍にも五倍にもなるんですね。例えば月収五十万の人であれば、月五十万の人でしたら、自営業者は今、月一万三千三百円ですが、月七万円ぐらいに保険料が上がる、これをどう考えるか。

それからもう一つ、スウェーデンは一元化をしておりますが、しかし、スウェーデンでは、自営業者はサラリーマンに比べて数が少ないんだと私は思うんですね。しかも、サラリーマンは自営業者と同じように所得を申告している、こういう大前提があるんですね。ですから、大前提は所得捕捉、日本なら少なくとも納税者番号制度を導入しなければなりません。

それから、津島委員からもお話がありましたが、女性の年金額が下がるなど、多くの問題があります。

以上のような問題がありますから、この二つの仕組み以外にも、例えばドイツでは、完全に職種別に、縦に分立した制度になっているんですね。職種内で負担と給付の公平を図るという制度を取り込んでおります。

では、日本では一元化されていないのか。一元化されているんですね。基礎年金の部分、国民年金の部分は一元化したんですよ、きちんと財政調整。強いて言えば、制度の運用、運営が一元化されていませんから、例えば厚生年金から公務員に移ったときに、あるいは逆に、そのときは数字がない、資料がないという変な話になる。しかし、基礎年金として、日本はここは一元化しているんですね。そして、自営業者とサラリーマン、公務員の職種の性格が違いますから、定年のあるサラリーマンには二階建てにしている。これが日本の年金制度であります。

先ほど申し上げましたが、スウェーデン型の年金制度をとろうと日本型の年金制度をとろうとドイツ型の年金制度をとろうと、将来のリスクと負担、制度に内在する少子化の進行等々のリスクの負担は全く変わりません。大事なのは、国によって社会的背景が異なるんですね。例えば、年金制度の歴史、これが違います。自営業者が多いかサラリーマンが多いか、所得捕捉の違い、どこまでを年金に頼るかなど国民の意識も違う。一元化を議論にするにしても、日本型の一元化はどのようなものか、スウェーデンのようなタイプの一元化案をこれが絶対の一元化案だと決めつけて、これを前提に議論をスタートしろというのは、私は残念ながら無理があると思います。

年金の議論というのは、頭を柔軟にして、多元的なアプローチが必要なんですね。私は、政治が不作為であってはならないと思います。とにかく、年金は政治の責任ですから、政争の具にすることなく、真摯な議論を早く開始すべきだと思います。

終わります。

○甘利委員長 これにて根本君の質疑は終了いたしました。