衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 住宅産業新聞
2012.8.30

放射能問題は「見えない津波」
    政治主導で「福島の復興」を

 財政・経済政策通でもある根本匠自民党前衆院議員は原発事故を含めた東日本大震災被災地の復興へ提言を続けており「福島の復興なくして日本の復興はない.政治主導で放射能対策等をダイナミックに推進せよ」と強調する。

 東日本大震災からの福島の今の復興状況について、どうご覧になっていますか。

根本 昨年はいろいろ提案をしてきましたが、現時点で東日本大震災からの復旧・復興施策は総点検をする必要があると考えています。今回の施策の効果を、地域の具体的ニーズに応えているか、遅れている原因は何か、チェックすべきだということです。典型的なのが復興交付金ですが、これには予算が1兆9000億円ついていて、40の対象事業が上げられています。ただ、活用しようと思うと限定的で、津波でやられた地域には適用されるが、それ以外の地域では適用されないということがあるのです。低放射線での風評被害で、子供達が遊べない地域に、「放射能の影響を受けず、雨天でも雪が降っても活動できる運動場を作りたい」と、公園事業で要求しても残念ながら認められない。津波の地域しか想定されていないわけです。

 今回の災害による被害ですが、宮城、岩手は津波と地震ですが、福島は津波、地震と原発に起因する放射能被害の3つがあります。放射能による被害の状況で見ると、福島県全体は3つのエリアに分けられます。一つは放射線量が高く避難してくださいといった警戒区域にある「浜通り」地域。低放射線と風評被害のある「中通り」地域ですが、ここも人口が減っていて、手当ては不十分です。もう一つは会津地方。放射線量はほとんどないが、風評被害がある地域です。それぞれ対策のメニューが異なる放射能の問題は、原発に起因する災害なのですから、「放射能問題克服総合戦略」といった体系的な政策を作らないと、対策が遅れると去年から言ってきました。自民党には法案要綱も提出をしました。

  政治主導で迅速に

 放射能問題は「見えない津波」です。工場が出ていく、人口が減る、農業、観光も衰退する。とにかく、地域を元に戻すという復旧だけでなく、その地域を力強い復興に導くためにも、いま、総合的な戦略を打ち出す必要があります。今の復興交付金をはじめ各種施策では不十分で、このままでは福島の復興は立ち遅れます。

本格復興に向けての考え方があればお話しください。

根本 「ふくしま」の復興なくして、日本の復興はありません。原発事故による放射能災害『原発起因災害』は大災害です。除染や子供の健康、農業・産業再生は国の責任で対処すべきで、政治主導でダイナミックに復興をスピードアップしていくべきだと思います。  
問題点ごとに少し具体的な考え方をお話ししたいと思います。
 1番目は「除染」ですが、空間放射線量を下げるため、最先端の科学技術を使って、先進的な取組みを行うべきだと考えています。住民による「ボランティア除染」から、これを「専門的除染」にレベルアップを図っていく。除染技術はまだ発展途上の環境省だけに任せるということではなく、日本の産学官の科学技術を結集し、官邸の総合科学技術会議を司令塔に国家戦略として取り組む必要があります。問題は、除染の出口戦略ですが、中間貯蔵施設は政治が責任を持って前に進める決断をし、地域の人に希望の再生工程表を早く示すべきです。
  2番目には、「日本一住みやすい、育児しやすい、学びやすい、魅力ある地域に再生するため」子供達が安心して暮らせる地域にしなければならない。質の高い医療、福祉を定着させることで、予防、プライマリーケア、二次三次医療、救命救急、リハビリ、終末期、在宅ケア、福祉との連携などを実行していく。さらに食・農とのコラボレーションで日本一の健康・医療体制を創っていく必要があります。          
 3番目には産業の再建、産業の再生へ「ふくしま」を再生可能エネルギー等世界最先端のフロンテア産業集積の拠点にしていきます。産業集積を促進するため、「特区」による税の減免、グループ補助金、産業立地補助金は、効果がある。拡充強化が必要です。そして、風評被害を乗り越え、まずは地域農業を再生し、この素晴らしい福島の風土を未来に繋げるために若手農業リーダーの育成に努めるのと併せ、付加価値を高め、世界に誇れる「ふくしまブランド」を育てていくのが第4番目の復興策です。さらに第5には原発起因災害の万全な補償、6つ目には放射線量の数値の意義の明確化なども大事になります。そもそもの各種数値の意味、客観的な比較指標の提示等ていねいに分かり易く説明する。
 これが最も大事なのですが、政治主導による「ふくしまの本格復興」が求められます。具体的には、復興交付金、取り崩し型基金など各種基金は使い勝手が悪く、制度的にも欠陥が目立ちます。被災地に寄り添った再構築が必要です。大前提として、東日本大震災と阪神淡路大震災の質的な違いを改めて整理する。本質的な課題は何かを明らかにし、今のメニューを大胆に柔軟に見直す、政策の想像力と創造力が必要です。

復興住宅について提案されていることがあります。

根本 仮設住宅を払い下げ予定仮設住宅として、自治体が恒久住宅を建設し、入居者はある程度の賃料を払うが、その賃料はローンの返済資金に充てるという方式です。10年ぐらい過ぎた時点で、残存価格で自治体が入居者に払い下げることにすれば、無理なく被災者も住宅を取得することが可能となります。