衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 住宅産業新聞掲載
2006.10.04

“新・殖産興業”戦略が重要

ミスマッチ解消の施策に注目

――新たな住宅政策の展開に向けた基本法が制定されました

根本 確かに新しい住生活基本法ができて、その中でフローの住宅建設から良好なストックを重視した施策へという流れが示され、それは非常に重要なことなのだと思います。さらには、住宅単体の枠から抜け出して、全体の居住環境を含めて、まちづくりまで考えていく姿勢もとても大事なことです。

 また、今までは政府系金融機関である住宅金融公庫で見られたように、国が関与する形で持家取得が促進されてきましたが、その公庫も改革され、基本的にはマーケットが対応していく形となります。市場機能を誘導する形に政策転換するわけです。ただし、その流れの中でセーフティネットの部分はしっかりと整えておく。そして、国や地方公共団体、住宅関連事業者、居住者等の責務を重層的かつ明確に打ち出している点も評価できますね。理論的な形で、新しい時代に対応した住宅政策が整備されるベースになるものと感じています。

――来年度予算案なども示されましたが、個別の施策として何か期待できるものがありますか

根本 住生活基本法にも沿った施策として特に注目しているのは、中間法人を活用する形で、新たなアレンジを加えた「変形リバースモーゲージ」とでも呼べばいいのでしょうか、あるいは「発展型の定期借家権活用」と言えるかも知れませんが、新しい施策が打ち出されています。

例えば、高齢者が自宅を賃貸して自らはケア付き住宅で暮らす場合や、子育て中のファミリー世帯が広い住宅を借りることを想定したもので、いわゆるミスマッチ解消に向けた施策展開です。貸家供給サイドの情報をプールして、さらに借り手の情報もプールし、中間法人がマッチングさせる方法です。そうした潜在的なニーズをうまく引き出して、マッチングさせていく仕組みが今後はさらに重要になってくるでしょう。

定期借家制度を活用

――定期借家権制度が大事な役割を果たす形ですね

根本 私も定期借家権には深く携わってきましたが、実のところ十分には定期借家権制度の意義が浸透していないように感じます。あるいは定期借家権が、実務経験のない宅建業者さんなどには、何か扱いにくい制度として認識されているのかも知れません。定期借家制度見直しの議論の中で、そうした疑念が湧いてきまして、そういった認識を踏まえて中間法人の役割を考えると、とても良い仕組みになると考えられるのです。市場機能活用の側面もありますし、定期借家制度という有用な仕組みの普及にもつながります。

 実際、先に述べたニーズのミスマッチ解消には定期借家が大きな役割を果たすと思うのです。しかし現実として制度の普及が進まない側面がある。ですから、その間隙をつなぐ形で中間法人が活躍できると思うのです。本当は純粋に民間マーケットで実現できれば良いのですが、現実から一歩前進するために、そういう公的に補完する形の市場誘導策も必要ではないかと思います。これは、高齢者のもつ住宅資産、つまりストックの活用という側面もあるわけですから、新しくアレンジされた形のリバースモーゲージと考えられ、政策的な意義は大きいのではないでしょうか。

――民間マーケット活用の重要性が指摘されますが、市場はいまだ未成熟です

根本 確かに「民間市場の活用」とか「マーケット機能で…」などと抽象的な題目が挙げられますが、それにとどまらず、現実のニーズとマーケットの現状を具体的に捉えて、政策を打ち出すべきだと思います。「官から民へ」「市場原理で」とは言われても、現実として民間市場がそこまで成熟していない場合も多いのです。そういう時にこそ政策的な補完をして、マーケットを育てていく姿勢が重要になります。

 政策論的に述べるならば、市場が機能しなかったり、失敗したり、未成熟な時には、政策がその部分を的確にカバーしなければなりません。確かに住宅というものは、原則的には私的な財であるかも知れませんが、市場が熟成されていませんので、政策的に手を打っていくべき分野は、まだかなり残されていると思いますね。そして、私財であったとしても、社会ストックとしての側面が現実にあるのですから、政策の対象とすることに何ら違和感があるものとは考えていません。

経済はボーダーレス化

――内需振興策として良質住宅への投資拡大が求められています

根本 内需振興の柱として住宅投資拡大がとても重要なのは確かですが、いまや経済活動はボーダーレス化していますので、ある意味では視点を変えて、内需振興だけが日本の課題ではないと言える部分がありますね。むしろ新しい需要を海外で掘り出すような“脱・内需”型の考え方も必要になります。

例えば農産物。日本の有名なリンゴが中国でも1個2000円で売れる、日本産の長芋が台湾でもてはやされるといった現象もあります。10年前であれば日本の農産物輸出など考えも及びませんでしたが、いまやブランド農産物として扱われる品目も増えています。そして、観光客誘致も積極的に充実させていく方向性になっています。日本経済を多面的に見れば、海外からの需要をボリュームアップさせることも忘れてはいけないと考えられます。

そして現在、日本経済が再び活力を帯びてきました。それは製造業が競争力を取り戻して復活したからです。

 今後は、内需振興にこだわるだけでなく脱・内需の視点も持って、経済活動を多面的に捉えて考えていく必要があります。それこそ“新・殖産興業”戦略と呼ぶべき経済施策が必要だと思います。特にアジア市場をにらんだ経済戦略が重要になります。

それこそ日本の住宅建築技術もアジアへの輸出対象になり得るのではないですか。100年を超える耐久性のある住宅を建てる技術なのですから、ブランド化して輸出できるのではないでしょうか。

――住宅消費税については、どのように考えていらっしゃいますか

根本 住宅消費税については、税制全体の体系の議論の中で取り組んでいくことになるでしょう。確かに住宅に対する消費税課税も、税率引き上げが検討される中で大きなテーマですが、2011年にプライマリーバランスを黒字化させようとする政府方針の下で、その次の時代の財政健全化と社会保障とのバランスを考えて消費税も議論されなければなりません。

そこまでトータルに含めて消費税率や課税対象の問題が議論されるべきですし、合わせて住宅税制のもつ政策的部分も加味して検討しなければなりません。一つひとつ論理性を積み重ねて対処していくべき課題だと考えています。