衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
2006.03.22

定期借家制度を巡る議論の状況

皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました衆議院議員の根本匠です。

本日は、最近の定期借家制度を巡る自民党内の議論がどういう状況にあるかということを中心にお話しさせていただきます。

ご紹介にありましたように、私は今、自民党定期借家権等プロジェクトチームの座長を務めております。

もう2年ぐらい真剣に議論をしてまいりましたが、未だ賛否が分かれており、党としての定期借家制度の改正の方向性を示すには至っておりません。座長試案のようなものが出せていたら、ここでもご説明しやすかった訳ですが、まだ私の頭の中だけにとどまっております。

自民党の検討作業がそういう状況にあるということをご理解いただいた上で、話を進めてまいりたいと存じます。

そもそも私が定期借家制度の問題に携わるようになったのは、当選2回目の時。自民党は平成10年の通常国会に「定期借家権」の創設を柱とする借地借家法の改正案を提出しましたが、あの法案の策定から国会提出までのすべての作業を、定期借家権等特別委員会の事務局長として取り仕切りました。

余談になりますが、このように国会議員が法律をつくって国会に提案することを議員立法と言います。国会議員の中には、「法律は国会議員がつくるべきだ」と、議員立法が善で、官僚が作業を担当する政府提案の法律は悪という見方をする方がおられますが、日本のような議院内閣制の下では、政治家の指揮下で官僚が政策案をつくって法案に仕上げていくスタイルが一般的なのです。 こういうことを申し上げると、やや守旧派的に聞こえるかもしれませんが、何でもかんでも議員立法という考え方は極端すぎます。

中央官庁には優秀な官僚がごろごろしているわけですから、そうした連中を使わない手はない。それに、官僚がつくった法案でも、そのプロセスでは政治家が加わって徹底的に議論をしますし、政府提案として国会に提出する前にも、自民党内の部会や政調審議会、総務会に諮りますので、官僚が暴走することもない。

政府提案でいくか、議員立法でいくか。どっちがいいと、最初から決めつけず、その時その時で、テーマによって柔軟にやればいい。私はこう思っております。 借地借家法の改正案については、なぜ議員立法にしたかと言いますと、理由は2つあって、1つは、法制審議会に諮ると非常に時間がかかり立法化が遅れるからです。

もう1つは、法制審議会での審議となると、貸し主と借り主の権利関係の問題がメインになってしまうからです。無論、この権利関係の問題は非常に重要だが、借り主の保護や借地・借家人の権利関係の調整という視点だけでなく、広く国民のための住宅政策という観点、あるいは経済の活性化という観点から借地借家法を見直す必要があるのではないか、という問題意識が出発点になってますので、党を中心に政治主導、議員立法でいこうということになったのです。

当時の定期借家権等特別委員会の会長は保岡さん。保岡さんの要請で事務局長を引き受けたわけですが、社民党も加わった自・社・さ連立政権下での与党の調整作業は容易ではありません。自民党案を3党の協議にかけて、話がまとまるのに2カ月以上もかかりました。

3党の合意を経て法案がまとまり、国会に提出したのが平成10年の6月頃。苦労の末、やっとここまで辿り着いたわけですが、委員会審議が終わらず、「次の国会」で成立を期すことになりました。

私はその直後に厚生政務次官に就任したので、この問題から遠ざかっていましたが、平成11年の秋に政務次官を辞め党に戻ってきても、改正案はまだ成立していないという。案の定、保岡先生から呼び出しを受け、「今度の臨時国会に再度提出するので提案者になってくれないか」と懇願されまして、再びお手伝いすることになったわけです。

この法案の審議は建設委員会で行いました。定期借家制度を議論すると必ず「住宅弱者にどう対応するんだ」という話が出てきますので、中身は定期借家権の創設ですが、住宅政策で取り組むべきことも法案に盛り込んで「良質な賃貸住宅の供給の促進に関する法律」として平成11年の秋に成立しました。自画自賛になりますが、なかなか良くできた法律だと思います。

ところで、当時の私は、この問題のほかに不良債権問題にも取り組んでおりまして、金融機関の不良債権を実質的に処理するためにはぺんぺん草が生えている銀座の一等地、つまり不良債権化した担保不動産が売れるような仕組みを考える必要があり、土地の流動化を促す政策をまとめようということになりました。

覚えておられる方も多いと思いますが、平成10年の春に自民党が打ち出した「土地・債権流動化トータルプラン」がそうです。このプランは、政策新人類と呼ばれていた私や石原さん、塩崎さんら若手議員が中心になってまとめたもので、政府・自民党の総合経済対策にも盛り込まれました。

定期借家権の話も、その一環として非常に重要なことであるということが提起され、自民党として土地問題とワンセットで取り組んだわけです。

前置きが長くなりました。そろそろ本題に入りたいと存じます。

私は今、保岡先生の要請で昨年の3月から自民党定期借家権等特別委員会・法改正検討プロジェクトチームの座長に復帰しまして、定期借家権の見直しの問題について14回くらい議論を行ってきました。

それまで2年ほどこの問題から離れておりましたので、定期借家制度がどのくらい普及しているのか国土交通省に尋ねたところ、「新規契約に占める定期借家の割合は平成13年が2.8%、15年が4.7%と着実に増加傾向にあります」ということでした。

定期借家制度の導入で私たちが期待していたのはファミリー型の良質な借家が市場に出てくるということでした。そう言う目で見ると、契約全体に占める定期借家契約の割合が戸建てファミリー向けが11.2%、共同建ては4.0%。こういう数字になっているんですね。

さらに、普通借家と定期借家の違いは、定期借家の方が賃料も安くなります。これも、東京23区内の70〜120uの物件では定期借家の方が1割前後安いという傾向が見て取れます。

以上が、定期借家制度の導入効果ですが、普及の度合いが意外に低い、というのが私の率直な印象です。  で、法律をどう見直していくか、ですが、これまでの議論である程度の論点整理の方向が見えてきました。議論はまだ収斂していませんので、今ここではっきりと決めつけて言うことはできませんが、多少こういうことではないか、という方向性で申し上げたいと思います。

まず、定期借家制度の見直しについてです。論点は3つあります。

1つは、定期借家制度の導入前に締結された居住用普通借家の切り替え問題。このテーマについては導入時にも議論をしましたが、切り替えを認めてしまうと、定期借家というものを分からないまま切り替えられて、借家人の方は大丈夫かという声が上がり、「今回は風穴を開けることが大事なので、切り替えは認めないことにしましょう」ということにしたわけです。

定期借家制度というのは、普通借家か定期借家かを当事者の合意で選択するわけです。契約自由の原則で行うわけですから、当事者の合意があれば、いつまでも切り替えを禁止する必要性も合理性もない。切り替えて定期借家になれば賃料が安くなるのに、切り替えを認めないと賃借人の影響を損なう恐れがある。

この切り替えの問題をどう考えるかということですが、一定の様式の書面できちんと説明することなど条件に切り替えを認める方向でまとめていこうかと思っております。

一定の様式の書面での説明とは、契約が満了したらちゃんと明け渡すんですよ、とか、切り替えはあくまでも借り主の自由ですよ、といった点を、定期借家制度の説明をきちんとすることを条件に切り替えを認めたらどうかな、と。

様式についても、公正証書でなければだめだという意見がある一方で、重要事項を説明していればそれでいいんじゃないか、という議論もあります。プロジェクトチームの方向性としては、きちんとした書面で説明して切り替えを認めることではどうかどうかなと、個人的には思っております。

2つ目は、賃貸人の書面による説明義務の廃止。これについては、仲介業者の皆さんが重要事項説明を行っている場合や再契約の場合には説明義務を課す必要はないのではないか、という問題点が指摘されております。

これについては、仲介業者の皆さんが重要事項説明を行っている場合や再契約の場合には「説明は不要にしたらどうか」という意見がありますが、「仮にそうするとしても借りる人にきちんと理解してもらう必要がある」という議論もありますので、ここは重要事項の説明書の様式を改善する、つまり重要事項と別にやるのではなく、その重要事項の様式、中身を変更して、それをきちんと盛り込むことでどうか、と考えております。

3つ目は、居住者用定期借家の賃借人の中途解約権の廃止について。床面積200u未満の居住者用建物の定期借家について、転勤や療養、介護などのやむを得ない事情によって建物を生活の本拠として使用することが困難になった場合、中途解約権が強行規定、きょうお集まりの皆さんには釈迦に説法ですが、こういう規定があるんですね。

これについては、当事者が中途解約権を排除しますと合意すれば、その特約の効力を認めるべきではないかという問題点の指摘があります。強行規定であるべきではないと。

それから、これは不動産証券化するときにも、この規定が将来の見通しという点でいろんな問題が生じますよ、こういう問題点の指摘があります。これについては、中途解約権を特約によって排除する、つまり中途解約を特約によって認める、こういう方向でどうだろうか、これが有力な意見になってます。一方では、やはり中途解約権は必要だと。ただ、それに代わって、今は1カ月前の通告になってますから、これをもっと数カ月に延ばして、その数カ月で空き家になった危険負担を、つまり1カ月ではなく、その1カ月を延ばしてということをやるべきではないか、実はこういう意見もあります。

要は、この3つの点について議論をし詰めている最中です。様々な意見を集約していく中でそろそろたたき台を提示しようと思っております。

定期借家権制度のほかには、普通借家制度の見直しがあり、建物の老朽化に伴う建て替えなどの必要性が正当事由の判断要素として条文に明記されてませんので、この正当事由の有無の判断に適切に反映されていない。実はこういう問題点の指摘がありまして、まだ決まっていませんが、建物の老朽化などに伴う取り壊し、または建て替えの必要性、これを正当事由の判断要素として条文に明記するという方向性はあり得るのではないかと思います。 

それから、立ち退き料の在り方。算定にあたっての規定とか基準になるようなものが設けられていないので、この立ち退き料の算定について、建物の明け渡しの時に予測することが困難だ、こういう問題があるので、ここのところを見直してくれないか、ということがあります。これはなかなか難しい問題です。

以上、定期借家制度と普通借家制度の見直し問題についてお話ししましたが、もう1つ、事業用借家制度を創設して欲しいという要望があります。簡単にいえば、更新が可能で正当事由条項が不適合、そういう事業用借家制度というものを導入して欲しいという要望があります。

この点については、事業用借家の場合は事業用だから交渉力は対等と考えられるので、正当事由によって一方的に借りる側を保護する必要はないのでは、という声がある一方で、不動産証券化を図るときに賃料の増額請求権を完全に排除してもいいのでないか、という意見もあります。議論の大筋の流れとしては、事業用については契約更新が可能で正当事由のあることを要しない事業用借家契約制度の導入を検討すべきではないかという方向になっています。

この事業用借家制度の議論を進めていくと、更新型定期借家制度という話も出てくるんですが、この差が非常に縮まってくるんですね。

一方で、更新可能な定期借家制度を導入して欲しいという要望もありますが、更新型の定期借家を考えていくと、事業用の借家制度というものをつくるということと極めて近接してくるんですね。この辺は、そもそもの普通借家というのは全体にあるわけですが、定期借家が導入されたという全体の法体系の整合性、こういうことを踏まえた上で事業用借家制度でいくのか、更新型定期借家制度でいくのかという議論の整理が必要でしょう。

事業用借家制度、つまり更新可能で正当事由はない、これが現実的ではないかと思います。これもこれからの議論、と言ってももう議論しているわけですが、どういう形でたたき台を示すか、その時にどういう方向性でいくのかについては、もう少し時間が必要です。

それから、定期借家制度を含めた全体の法制度の動きですが、実はこの定期借家制度と普通借家制度の見直し、事業用借家制度を巡る議論のほかに、事業用定期借地権をどうするかという問題も、私たちは議論をしてまいりました。20年以上50年未満についても事業用定期借地権を認めるべきではないか、という議論もしてまいりました。

ただ、この事業用定期借地と定期借家を一緒に法改正案に盛り込み法務審議会で議論すると、定期借家の方が相当な議論になってしまいますので、まず事業用定期借地制度の改正を先行させ、その後で定期借家制度の改正を法務審議会で議論するという2段階方式をとることにしました。

本来ならば、既に法律が成立していなければならないのですが、会期の問題もあって、法務委員会の審議が重要日程目白押しのために詰まっているんですね。私としては、重要法案の隙間に事業用借地制度の改正案を潜り込ませ迅速に成立させたいところですが、国会運営上議員立法はどうしても後回しになってしまう。

情勢は極めて不利ですが、今国会で是が非でも成立を図りたいと考えております。

それから、繰り返しになりますが、定期借家制度の見直しの論点、方向性については、昨年秋の衆議院選挙以降、プロジェクトチームのメンバーも入れ替わりましたので、議論の詰めをして、「根本試案」、つまり自民党定期借家権等プロジェクトチームの座長としてのたたき台のようなものをお示しし、議論の最終的な詰めをこの国会中に進めてまいりたいと考えております。

私に与えられた持ち時間は30分だそうでして、そろそろ制限時間いっぱいになってきましたので、この辺で締めくくりに入りたいと存じます。

定期借家制度については、制度導入の効果をきちんと検証する必要がありますし、何が制度上のネックになっているのか、さらには反対している人もおられるわけですから、反対する方々への配慮もしながら、制度としてちゃんと機能するよう仕上げていく必要があります。

一方で、定期借家の問題というのは、単に定期借家をどうするかという問題と併せて住宅政策として、たとえばいわゆる住宅弱者にどう対応するのかといったことなどの課題についても合わせ技で政策として整理をし、まとめていく問題だと思います。その辺の住宅行政の新たな展開もありますので、状況、時期としては、住宅基本法が議論されますので、ある意味でタイムリーな議論ではないか、と思います。

以上、自民党定期借家権等プロジェクトチームの座長という難しい立場にあるために明確な基調報告ができませんでしたが、現時点での議論の方向をお示ししたということでご理解いただければと思います。立場上、奥歯に物が挟まったようなところもありましたが、その辺は、阿吽の呼吸でご判断いただきたいと存じます。

ご静聴有り難うございました。(拍手)