衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
2004.11.19

新たな住宅金融システムへの移行に向けて

住宅金融改革小委員会・提言

自由民主党政務調査会
住宅金融改革小委員会委員長 根本 匠

1 提言に向けて

これまで我が国の住宅金融においては、財政投融資制度を背景に住宅金融公庫の長期固定低利の住宅融資が大きな役割を果たし、国民の住生活の向上に大きく寄与してきた。また、バブル経済崩壊後をはじめとした景気後退時において住宅投資拡大策としてそのシェアを高め、経済対策としての役割を果たしてきた。

しかしながら、近年の財政再建、財投改革、金融改革及び特殊法人改革の流れの中、この住宅金融システムの改変を迫られている。住宅金融公庫も平成18年度中に廃止、証券化支援業務等を行う独立行政法人を設置することが定められており、公庫融資が縮小する中、民間金融機関による住宅ローンの割合が急増し、その競争も激しくなっている状況にある。しかし、民間住宅ローンの大半を占める変動・短期固定の商品は、金利上昇局面ではリスクや資金の安定化等の面で大きな不安材料を抱えている。第156回国会で成立した改正住宅金融公庫法等に基づき、15年10月に導入された公庫の証券化支援による長期固定の民間住宅ローンは、いまだ伸び悩んでいるものの、これを契機としてモーゲージバンカー(預金等を原資とせず、主に担保付住宅ローンの売却代金を資金として、貸付けや元利金回収に係るフィービジネスを展開するノンバンク)など住宅金融市場の新しい担い手の参入や住宅ローン担保証券(MBS)市場の萌芽など産業構造の変革の兆しも見られる。

また、多様な住宅ローンの出現に対応して、消費者のライフスタイルに応じた適切な選択を可能とする情報提供体制の整備のほか、民間だけでは資金供給されないセーフティネットの設定、地球環境・防災・少子高齢化といった社会の要請に応じた住宅の質の誘導も市場の中で求められているところである。

このような背景の下、民間住宅ローンが中心となる今後の住宅金融市場において、いかにして安定的に資金を確保し、活発な市場を整備するか、また、市場では欠落しがちな課題にどのように対応していくかについて、その基本的方向性とともに、新たに設置される独立行政法人が果たすべき役割に関して提言を行うものである。

2 提言の基本的視点

民間住宅ローンが中心となる住宅金融市場において、国民の方々が安心して、その需要に見合った住宅資金を全国遍く安定的に確保できるよう、次のような基本的視点から、提言を行うものである。

(1)安定的な資金の確保と活発な住宅金融市場の形成

  • 長期固定の住宅ローンの安定供給等を実現するための証券化市場を活用した新たな住宅ローン市場の環境整備
  • 住宅金融分野への新規参入の促進を通じた多様で効率的な住宅資金供給体制の整備
  • 利用者が適切に住宅ローンを選択するために必要な情報提供体制の整備

(2)市場を補完する分野への対応

  • 民間による資金供給が困難で政策上補完すべき分野への対応
  • 省エネルギー化・バリアフリー化・耐震化等の社会経済上の要請に応じた住宅の質の向上・品質の確保

3 現状と課題

(1)住宅金融市場の現状

拡大した民間ローンの中心は変動・短期固定ローン

平成13年閣議決定「特殊法人等整理合理化計画」に基づき、公庫融資を段階的に減少してきたが、この代わりに民間住宅ローンが増加してきている。しかし、その内容は、長期固定の住宅ローンに対する利用者ニーズが高いにもかかわらず、変動・短期固定ローンが中心で、長期固定の割合は約1割に過ぎない状況である。

これは、民間金融機関においては、法人向けの資金需要が減退する中、今後の収益源となる個人向けの住宅ローンに積極的に取り組んでいるものの、短期間の預貯金等を原資とすることから、適正な資産負債管理(ALM)を実現するため、長期固定資金の貸付けは限定的に行わざるを得ないことによる。

公庫の証券化支援事業はまだ低調、拡大が求められる

昨年10月から、公庫が証券化支援を行うことにより、一定の信用力を背景としながら、全国規模の民間によるローンプールを組成し、住宅ローン担保証券(MBS)の発行による低利な資金調達を通じて安定的に長期固定の資金供給を行う仕組みが実現した。

しかしながら、証券化支援事業については、一部の民間金融機関を除き、全般的に取組みが不十分であり、また、利用者への浸透もこれからという状況にあり、本格的な事業拡大に向けての実効性のある取組みが必要である。特に、今後の金利上昇局面において、長期固定金利である証券化ローンの利用拡大が求められる。

また、公庫融資は融資の申込時に金利を確定される(申込時金利)一方、証券化ローンは融資の実行時に金利が決定される(実行時金利)ため、特に融資申込みから資金実行まで長期間にわたるマンションの場合、証券化ローンが選択されにくい状況も指摘されている。

MBS市場の整備・拡大も期待されている

公庫がこのために発行するMBSは、国債に準ずる安定的な利回り(国債金利+α)で取引されており、これまでは市場の消化能力は十分見られるが、米国においても証券化市場の発展には数十年を要しており、さらなる投資家層の拡大が求められる。

また、MBS市場の状況に応じて公庫が一定期間ローン債権を保有することについても、リスクや業務肥大化等に十分配慮しつつ、実施が期待される。

(2)住宅ローンの内容・リスクに関する利用者への情報提供

現場では変動・短期固定ローンが勧められている

近年、当面の金利が低い変動・短期固定のローンを選択する利用者の割合が高くなっているが、金融機関に限らず、住宅・不動産業者においても、利用者の当面の返済負担額を抑制できる変動・短期固定の商品を販売促進上利用者に勧めがちな現状にある。

しかしながら、民間ローンの主力商品である変動・短期固定の住宅ローンについては、金利上昇に伴って返済額が大きく増加し、利用者の負担増をもたらし、社会問題化する可能性がある。特に、30歳代の若年層はリスクが大きいと考えられる。

また、少額の頭金で住宅を購入し、将来住宅を売却しても住宅ローンが残る者も見られる。

わが国では住宅ローンの金利リスクの情報提供が十分とは言えない

米国においては、ローンを貸し付ける際、利用者に対して最悪シナリオ(金利が上昇した時)での返済額の説明が明確になされている。

わが国の民間金融機関においては、利用者の要望に応じ、返済額シミュレーションの提示、小冊子の配布等による一定の情報提供もなされているというものの、現行の金融商品販売法の適用外であり、全体的にリスクが示されている状況とは言えない。

(3)住宅金融分野における新規参入と競争の活性化

住宅ローン関連業務の分化と新規参入の期待

従来は、公的金融機関及び民間金融機関とも資金調達・貸付・管理回収・リスク管理といった一連の業務を自らが実施した。

米国においては、住宅ローン関連業務の機能分化(アンバンドリング)が促進され、住宅ローン貸付けを専門に行うモーゲージバンカーが貸付主体の大半を占め、また、複数の住宅ローンから利用者ニーズに合うものをあっせんするモーゲージブローカー(住宅ローン希望者に対して、各金融機関の住宅ローンプログラムを紹介、最適なプログラム選択のアドバイス、手続きの代行等を行う仲介業者)に相談するのが一般的である。

わが国においても、証券化の進展により、住宅ローン関連業務の分化が促進され、新規参入による競争の活性化が期待される。

(4)市場を補完する分野への対応状況

民間で供給されにくい融資分野がある

災害関係や密集市街地建替等の都市居住再生に係る資金については、公庫が政策に合わせて機動的に供給している状況にある。

また、一定の収入がありながら、転職者や団体信用生命保険に加入できない者等に対しては民間による資金供給が不十分な状況にある。

高齢社会に向けたリバースモーゲージは低調

リバースモーゲージ(高齢者が老後の生活資金等を得るために、自らの住宅を担保に貸付けを受け、死亡時に担保を処分して一括償還する仕組み)は高齢社会における住宅ストックの有効活用の観点から重視されるべき施策であるが、それに対する民間金融機関の最近の取組みは、相続時のトラブル、デフレ下の資産評価等から低調である。

公庫の質誘導機能は低下

公庫融資が段階的縮小される中、金利の引下げや融資額の割増を通じた住宅の質の確保・誘導策の機能が低下している。

4 提言

(1)民間による安定的な住宅資金の供給を支援・補完する独立行政法人の設立

a. 証券化支援の拡大

長期固定の民間住宅ローンの供給を支援する証券化支援業務を独立行政法人の業務の柱とする。

これを速やかに普及するため、本年4月より提示金利の引下げ、敷地面積要件の撤廃、共同住宅の床面積の下限の緩和等がなされ、本年10月より中古住宅の対象追加もなされたが、さらに、公庫の提示金利のさらなる引下げ、中古住宅の築年数要件の緩和その他魅力ある商品とするための制度改善を強力に行うべきである。

また、各種マスメディア等を有効に活用して、金融機関・住宅関連事業者・消費者への周知活動を行う必要がある。

さらに、信用リスクを民間に委ねる場合の証券化の仕組みや、既存ローンの借換えを証券化ローンの対象とすることについては、今後の課題として検討すべきである。

b. 住宅融資保険の実施

民間の保証会社等の機関保証を活用できない中小金融機関等に対して、リスク負担を軽減し、住宅資金の円滑な供給を支援・補完する観点から、独立行政法人において住宅融資保険を着実に実施することが必要である。

c. 住宅の質を政策的に誘導

耐震・省エネルギー・バリアフリー等の社会の要請に対応して、質の向上・品質の確保を図る観点から、独立行政法人が証券化支援による民間住宅ローンを活用して、耐震・省エネルギー・バリアフリーに配慮した良質な住宅に対して金利優遇措置を行うべきである。

d. 住情報の提供

住宅及び住宅ローンの適切な選択を可能とする政策的課題に対応して、これまでの経験を生かし、利用者や住宅関連事業者に対する住宅ローンや住宅関連の情報提供のための役割も適切に担うべきである

(2)住宅金融市場の拡大方策

a. モーゲージバンカー等の設立促進

競争的な住宅金融市場を実現する観点から、モーゲージバンカー、モーゲージブローカー等の住宅金融関連産業の育成等が重要である。中古住宅市場の拡大が喫緊の課題となる中、中小宅建業者が顧客の資金需要に的確に応えることのできるモーゲージバンカーの設立も期待し、そのための汎用システムの整備、利用者への研修等の条件整備を行うべきである。

b. MBS市場の整備等

住宅金融市場を拡大するため、証券化を促進するMBS市場の育成等が重要である。このため、公庫MBSの発行規模の拡大を図っていくため、安定した投資家層を拡大していくとともに、公庫の既往債権の証券化を行い、証券化市場をできる限り早期に拡大することも検討すべきである。

c. ノンリコースローンの実現等

借入者の信用力ではなく住宅の担保価値に着目して融資を行うノンリコースローンについても、商業用不動産等に対する融資で一部普及しつつあるが、住宅ローンの分野においても、担保価値の評価方法の確立等を図りつつ、実現に向けた取組みを行うべきである。 また、住宅ストックの活用による居住水準の向上を図るため、リバースモーゲージ等のプロジェクトの推進に向けた取組みを行うべきである。

(3)住宅ローンの内容・リスクに係る情報提供の充実

a. 住宅ローンのリスク等の情報開示

金融機関はもとより、住宅事業者においても、住宅ローンの内容・リスク等についてあらかじめ利用者に対する十分な情報開示と消費者への告知が確保される必要がある。

この場合、金利リスクのある変動・短期固定のローンに関し、ローン利用者に対して最悪シナリオに基づいた返済額の試算、残高の推移の提示を義務付ける消費者保護制度の確立について緊急に検討すべきである。

b. 住宅ローンアドバイザーの育成

米国・英国における住宅ローンブローカー規制にならって、住宅事業者等においても住宅ローンを適切にアドバイスできる者(住宅ローンアドバイザー)の育成も行うべきである。

(4) 民間による資金供給が困難な分野への対応

a. 民間による資金供給が困難で政策上補完すべき分野

民間でできる融資は民間で行うことを基本とする。その上で、独立行政法人は、民間による資金供給が困難で政策上補完すべき分野として、少なくとも災害対応や密集市街地建替え、マンション建替え等の都市居住再生分野における資金供給が円滑に行われるようにすべきである。

b. 住宅資金が安定的に供給されるためのセーフティネット機能

職業・勤務先、団信加入の可否等の区別なく、一定の返済能力がある者に住宅資金が安定的に供給されるためのセーフティネット機能については、独立行政法人設置までに、融資選別を行わない証券化ローンの普及動向や民間住宅ローンの動向を十分注視しながら、最終的な判断を行っていくべきである。

(5) 公庫の既往債権の管理

公庫は、返済困難者に対して返済条件の変更などきめ細やかに対応しており、公庫の既往債権を引き継ぐ独立行政法人においても、引き続き既契約者(430万件)に対して適切な対応が必要である。

(6) その他

公庫においては、自然災害により二重の借入れをして住宅を再建せざるをえない者に対し、元金返済据置期間を設けた低利の災害復興住宅融資と既往債務者に対する一定期間の返済繰延べ等の措置を行っているところであるが、今後、被災者救済に係る幅広い観点から対応を検討していく必要がある。