衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 「諸君!」2001年6月号
2001.06.01

「四騎の会」は何を考えているか - 3

派閥の論理で動いていてはお先真っ暗。政治家は今こそ、将来のビジョンを国民に示せ!

塩崎:

イギリスやオーストラリアのように議院内閣制をとっている国の議員に、派閥があるのかと聞いたら、やっぱりあるというんですね。しかしそれは、基本的には右、中道、左と、要するに政策で分かれている。人事の機能もあって、右の派閥から出ている大臣が辞任したときには、やはり右のグループから出すそうです。しかし、自民党の派閥は単なる人的な繋がりでしかない。

確かに右肩上がりの時代なら、政策は霞ヶ関の官僚に任せて、政治家は権力闘争と利益配分だけをやっていればよかった。けれども今は、財政的に非常に厳しい状況だから、税金の使い方をギリギリのところで決めなければならない。にもかかわらず、大きな政府で行くか、小さな政府で行くかという大まかな方針すら派閥単位ではたてられないわけです。

根本:

役所に案を書かせると、いいものは上がってくるかもしれないけれど、どうしても縦割りになってしまうからね。しかも少子高齢化、赤字財政の下では痛みを伴うことをやらなければならないから、よけいに官僚には政策調整が難しい。政治家に期待されるのは、官僚の案を各省庁と徹底的に議論しながら横断的に纏め上げることで、それこそが本当の政治主導です。

渡辺:

行政改革で、大臣・副大臣・政務官として70名近くの国会議員が政府の中に入るようになったのも、そのためですよね。その中心となるのは首相官邸のはずですが、森さんの時代には官邸よりも影響力がある人が与党に何人もいた。だから、株価が下がって金融システム不安が起きたりすると、官邸は対策を与党に丸投げ、与党は官邸を抜きにして緊急経済対策をつくるなどということがおきる。こうした権力の二重構造の下では、国家の意思が見えないから株が売られ、円が売られ、つまり日本が売られてしまう。

根本:

しかし、これから本格的に政治主導の時代を迎えるとすれば、政治家には民意に反応するスピードや冷静な分析力がいっそう求められますね。特に、説得力あるビジョンを提示する能力は重要だと思います。

たとえば社会保障の問題については、将来が不安だという声がよく聞かれる。しかし、ここ数年の間に行われた改革は、実は明確なビジョンに基づくものです。地元でもきちんと説明すればわかってもらえましたから。

まず厚生年金は、世代間扶養、つまり子どもが退職した親を養うという仕組みですが、少子高齢化によって将来世代の負担が重くなり過ぎるために改革をしました。その内容は、支給額の伸び率を調整すること、支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げること、そして65歳以上でも収入の多い人には少し返上してもらうことですが、それだけで年金の支給額を下げずにすむ。もちろん、25年間かけて、65歳まで働ける社会にすることはいうまでもありません。

石原:

支給額が下がるという誤解があるんだよね。支給額が2割カットされるという言葉だけが先走りして、パニックになってしまった。

塩崎:

2025年の時点で、国が払う年金の総額が、現行の制度を続ける場合よりも2割減るということなんです。一人ひとりの額ではない。

根本:

一方、寝たきりの不安については、介護保険を導入しました。最重度の人は月額35万円ぐらい介護費用がかかるとされます。自己負担額は3万5千円になるので、負担が重いといわれるけれど、10倍のサービスが受けられるわけだから、不安は解消されると思います。さらに、年をとると生計費は減っていくから、75歳で寝たきりになったら、特別養護老人ホームに入る場合の自己負担は6万円弱でいい。それは基礎年金の6万6千円でまかなえるんです。

日本の金融資産が1,380兆もあるのは、老後の不安という要素が大きかったからだと思います。だから、これからはそんなに貯金しなくてもいいし、その分をぜひ消費に回してもらいたい。病気になったら医療保険、寝たきりになったら介護保険、将来の所得保証は年金、というのは世界に冠たるシステムだと思います。

塩崎:

社会保障のように、おじいちゃん、おばあちゃんから赤ちゃんまで国民一人ひとりに関わる問題については、われわれは地元でわかりやすく説明して、そこで聞いた意見をまた東京に持って帰って議論しようとします。ところが、先日与党と政府の社会保障改革協議会というところで、大臣、幹事長、政調会長クラスが4回集まって、社会保障改革大綱という4枚のペーパーが出てきた。議論の前に、大枠を決められてしまったんです。

石原:

連立政権になって以来、政策が党内でボトムアップで出てくるのではなく、連立与党の幹事長、政調会長レベルで作られるようになった。初めに、もう変えられない大枠を決めた上で、議論してくださいというのでは困る。

塩崎:

しかも、そこには「セーフティーネットとしての社会保障にふさわしい範囲」なんて言葉が入っている。セーフティーネットなんていうと、最低限の保障しかしないように思われてしまうでしょう。また、「老人医療費を経済成長率とかけ離れないように」などと言われると、年をとれば誰でも悪いところが出てくるのに、成長率によって医療の質が抑えられてしまうのかという疑問が生じる。確かに、財政と社会保険は両立させなきゃいけないんですが、お役所言葉で言われると、不安が増してしまう。だから、国民に政策を伝える仕事をお役所任せにするのではなく、政治家が自分の言葉で説明しなければならないのです。